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ムカデ

 先生んちの食堂には丸い木のテーブルが置かれていて、そのまわりに飾っている絵が良かったな。フランスの新聞の切れ端に青いペンで書かれた郵便屋さんのデッサン。シャレててかわいらしくてとても良かった。台所の壁も他の所と同じように白く塗られていて、スペインの、銅製の調理用具がたくさんぶら下げてあった。実用品なんだろうけど、まるで装飾品のように台所を飾っていました。

 白い壁といえば、裏の4、5mある石垣も真っ白にペンキで塗られていました。台所に射す日の光がすこし少なかったから、反射させて明るくする意味もあったんだろうけど、主な目的は虫除けでした。裏の石垣は裏山の土を覆っているので、上の方は雑木林になっています。当然虫が多いんですよね、そんな処は。ある日、先生に呼ばれて行ってみると、裏の石垣にムカデがいるから駆除してくれないかという。殺虫剤を買ってあるからどうにかしてくれないかと。自分では嫌なんです。虫を見るのが。そこで、私も決して虫が平気な訳ではないけれど他ならぬ先生の頼み、しぶしぶ作業を始めたわけです。薄めた液を噴霧器に入れて石垣の隙間に次々と注入していきました。そしたら出てくるわ出てくるわ。大きなムカデがぞろぞろと。逃げ出すムカデ達を次々と石炭ばさみの様なもので取って始末しました。いまでも目に浮かびますね、あの気持ち悪さは。作業が終わって先生に報告すると、いつにもまして大喜びでしたけれど。


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