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3の法則

 三角構図法について述べたついでに、もう少し3という数字にこだわってみましょうか。

 たとえばグラディエーションです。自然に存在する調子、階調というものは無限ですよね。色数にしても同様です。しかし鉛筆や絵具で何かを描こうとした時に、無限では困るわけです。自分の中でどうにかして単純化しなければならない。
 今、目の前に一つの壷があるとして、さてどうするか。光があたって明るく輝く部分から丸みに沿って次第に暗くなり、反対側の下の方には相当暗い陰が出来ています。テーブルの上には影も出来ています。しかも、テーブルからの照り返しが壷の暗い部分をほのかに明るくしてかなり複雑な陰影となっています。明るい部分には窓の光が映り込んでいますし、壷に描かれた模様も存在します。さあ、この複雑な調子をどう処理しますか?

 私の場合はこうです。まず、真っ白から真っ黒までの調子を3分割して考えます。淡いグレーと暗いグレー、その中間のグレー。壷の細かい調子はひとまず見ないことにしてこの3階調で軽く塗り分けます。淡いグレーで塗った所にはもっと明るい調子が存在し、暗いグレーで塗った所にはもっと暗い調子が存在していますが、とりあえずはこの3階調しか考えないのです。次に、今分割した3階調それぞれをまた3分割します。最初に分割した調子がそれぞれの中間の調子になるように。つまり、淡い調子を例にとると、淡い調子、より明るい調子、より暗い調子となります。これで3×3で9階調になりました。最初に塗った3つの部分をそれぞれ描き進めてゆきます。

 何となく明るく、何となく暗くでは全体としてみた場合うまくいかないのです。ある部分では明るすぎたり、ある部分では暗すぎたりします。特に壷のような幾何学的にシンメトリーな形状のものは、調子のつけ方次第で歪んで見えたり、ありえない陰がついたりするので正確な調子の再現が要求されます。そのために単純化して描いてゆく必要があるのです。
 9階調ではもちろん自然な感じにはなりませんので、それぞれをまた3分割します。これで27階調。ここら辺りでその境目を滑らかにぼかしていけば自然なグラディエーションが得られます。必要があればもっと調子の幅を広げて構いません。強い影や窓の映り込みはこの段階の調子ではまだ描けませんから。それでも全体としては3階調なのです。ここが極めて大切なところです。複雑でありながら単純ということ。これは調子だけに限らず、色、構成、テーマ、全てに必要な要素なのです。


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