油彩の場合はその性質上塗り重ねが基本ですから、まず中間の調子を作っておいて、その後、より明るい部分と暗い部分に筆を進めて行きます。その時、より明るさを必要とする部分ほど混ぜる白い絵具の量を増やします。時には、そこだけ分厚く盛り上がるほどに大量の白を用いることもあります。その効果は絶大で、レンブラントにおいては明るく描かれた部分が実際に光を放っているように見えるぐらいです。
それに対して水彩の場合は、絵具の厚みではなく顔料の密度で濃淡が決まりますので、絵具を薄めることで明るさの調節をします。白を混ぜても白くなるだけで明るくはならないのです。密度の濃い白の絵具は紙の白さを覆い隠し、鈍い発色になってしまいます。白い色の表現にはなりえても輝く光の表現にはならないのです。したがって、水彩で描く場合には最初薄く描き始めて、明るい部分はそのまま残しながら、必要な部分を少しずつ濃くしていきます。あくまでも紙の白さを意識しながら、重くなりすぎないように注意しましょう。水彩はその軽やかさが命なのですから。
尚、有色下地の場合の処方、ガッシュ(不透明水彩)等については後述します。